第68期将棋名人戦七番勝負の第2局は前局同様横歩取り8五飛車戦法で始まり、結果は93手にて先手番の羽生善治名人が勝利し、開幕2連勝となりました。
横歩取りは挑戦者の三浦弘行八段にとっても得意としている戦法の筈ですが、ここでの連敗はこの先の戦いに響いてきそうですね。
私自身もこの戦型についてはあまりよく分かりません。
二日目の封じ手(▲5三桂成)以降、(後手が勝つ為の)決め手となるような手を見つけ出せませんでした。
「どこが問題だったのだろうか?」
遡って、序盤戦までの辺りで後手の陣形に疑問を抱いていました。
そもそも、39手目の▲2三歩(下図の局面)に△同金、さらに▲2四歩△同角の形が何とも表現しがたく、「これで後手が勝てるのかな?」という印象を持っておりました。

上図の▲2三歩の局面ですが、ここで△3一銀と引く手は考えられないのでしょうか?
以下▲8二飛(あるいは▲8三飛)に△2九飛とお互い飛車を打ち下ろし、▲8一飛成△1九飛成(変化図)なら後手が幾分良いように思えます。

変化図からは後手の持ち駒に香車があるので3筋からの攻めが利きそうです。
△3一銀なら後手に何か嫌な変化があるのでしょうか?
いつものことながら、(私が言うのも可笑しいですが)終盤に差し掛かって勝負を決める場面で魅せる羽生名人の読みの凄さには脱帽です。
相手を惑わせるような手を指し(61手目▲5三歩など)、勝利の方程式を解くように導く手順は絶妙ですね。
このままではすんなりストレートで羽生名人が防衛しそうです。
シリーズを盛り上げる為にも、3局目以降の三浦八段の巻き返しを期待したいと思います。
横歩取りは挑戦者の三浦弘行八段にとっても得意としている戦法の筈ですが、ここでの連敗はこの先の戦いに響いてきそうですね。
私自身もこの戦型についてはあまりよく分かりません。
二日目の封じ手(▲5三桂成)以降、(後手が勝つ為の)決め手となるような手を見つけ出せませんでした。
「どこが問題だったのだろうか?」
遡って、序盤戦までの辺りで後手の陣形に疑問を抱いていました。
そもそも、39手目の▲2三歩(下図の局面)に△同金、さらに▲2四歩△同角の形が何とも表現しがたく、「これで後手が勝てるのかな?」という印象を持っておりました。

上図の▲2三歩の局面ですが、ここで△3一銀と引く手は考えられないのでしょうか?
以下▲8二飛(あるいは▲8三飛)に△2九飛とお互い飛車を打ち下ろし、▲8一飛成△1九飛成(変化図)なら後手が幾分良いように思えます。

変化図からは後手の持ち駒に香車があるので3筋からの攻めが利きそうです。
△3一銀なら後手に何か嫌な変化があるのでしょうか?
いつものことながら、(私が言うのも可笑しいですが)終盤に差し掛かって勝負を決める場面で魅せる羽生名人の読みの凄さには脱帽です。
相手を惑わせるような手を指し(61手目▲5三歩など)、勝利の方程式を解くように導く手順は絶妙ですね。
このままではすんなりストレートで羽生名人が防衛しそうです。
シリーズを盛り上げる為にも、3局目以降の三浦八段の巻き返しを期待したいと思います。
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昨日行われましたマイナビ女子オープン五番勝負の第3局は、ここまで2連勝だった挑戦者の甲斐智美女流二段が181手で接戦を制し、3-0のストレートで自身初となるタイトルを獲得しました。
振り飛車党の甲斐女流二段が先手で飛車をどこに振るのか注目していましたが、3手目に早くも▲7八飛とし、三間飛車になりました。二人の対戦では初めてとのこと。
私はこの▲7八飛の手に後手の矢内理絵子女王が意表を突かれたのではと思いました。おそらく中飛車を中心に読んでいただろうと・・・。
中盤の駒の捌き合いは面白かったですね。どちらも大駒(飛車・角)の進出を阻止するような一手一手の読みはそれなりに深みがありました。
さて、盤面が進んで最終盤、勝負の分かれ目とも言える局面を取り上げてみました。

上図は、先手の甲斐女流二段が159手目に▲8一角成とし(△同飛なら▲3五桂)、これに対し後手の矢内女王が△3五歩と金頭を叩いた後、先手が▲3五同金と応じた局面です。
本譜は図から次の一手が△4六飛でしたが、▲5七角と切り返され、たちまち先手勝勢となりました。
では、上図で△4六飛に代えて△8一飛と馬を捕っていたらどうだったでしょうか?
これには▲3三歩成と捨てて△同玉に▲3四銀(変化1図)で難しそうですね。

変化1図から△同銀なら▲同金△2二玉▲2三銀△3一玉に▲3三金の詰めろで先手勝勢となります。途中▲同金に△4二玉は▲3三銀以下追い詰められてやはり先手が勝ちそうです(▲7三歩成がある)。また△3二玉には▲3三歩が利きます。
変化1図から△2二玉と逃げるのは▲4三銀成△3六桂▲1八玉で後手の手が途絶えそうです。
ならば△4二玉では・・・、以下▲4三銀成△同玉▲3四金△5三玉▲5四歩△6三玉(変化2図)となって、先手に有効な攻めがあるでしょうか?

変化2図から▲8二歩と飛車先を叩いて△同飛なら▲7三銀が詰めろで先手良さそうですが、▲8二歩の瞬間が甘く後手からの反撃に遭いそうです(△5九角とか)。
その他にも変化がいろいろとありそうですが、△8一飛なら以上のようにまだまだ大変だったでしょうし、勝敗の行方がどちらに転んでいたか分かりません。
うーん、それにしても矢内さんの調子がいまひとつこのシリーズでも出なかったのが気になりますね。
危ない橋を渡りながらも、果敢に指し回した甲斐さんの将棋は見事だったと思います。
これからの活躍にも期待が持てそうです。
女流棋界は若年の活躍も話題に上っていて、この先益々面白くなりそうですね。
振り飛車党の甲斐女流二段が先手で飛車をどこに振るのか注目していましたが、3手目に早くも▲7八飛とし、三間飛車になりました。二人の対戦では初めてとのこと。
私はこの▲7八飛の手に後手の矢内理絵子女王が意表を突かれたのではと思いました。おそらく中飛車を中心に読んでいただろうと・・・。
中盤の駒の捌き合いは面白かったですね。どちらも大駒(飛車・角)の進出を阻止するような一手一手の読みはそれなりに深みがありました。
さて、盤面が進んで最終盤、勝負の分かれ目とも言える局面を取り上げてみました。

上図は、先手の甲斐女流二段が159手目に▲8一角成とし(△同飛なら▲3五桂)、これに対し後手の矢内女王が△3五歩と金頭を叩いた後、先手が▲3五同金と応じた局面です。
本譜は図から次の一手が△4六飛でしたが、▲5七角と切り返され、たちまち先手勝勢となりました。
では、上図で△4六飛に代えて△8一飛と馬を捕っていたらどうだったでしょうか?
これには▲3三歩成と捨てて△同玉に▲3四銀(変化1図)で難しそうですね。

変化1図から△同銀なら▲同金△2二玉▲2三銀△3一玉に▲3三金の詰めろで先手勝勢となります。途中▲同金に△4二玉は▲3三銀以下追い詰められてやはり先手が勝ちそうです(▲7三歩成がある)。また△3二玉には▲3三歩が利きます。
変化1図から△2二玉と逃げるのは▲4三銀成△3六桂▲1八玉で後手の手が途絶えそうです。
ならば△4二玉では・・・、以下▲4三銀成△同玉▲3四金△5三玉▲5四歩△6三玉(変化2図)となって、先手に有効な攻めがあるでしょうか?

変化2図から▲8二歩と飛車先を叩いて△同飛なら▲7三銀が詰めろで先手良さそうですが、▲8二歩の瞬間が甘く後手からの反撃に遭いそうです(△5九角とか)。
その他にも変化がいろいろとありそうですが、△8一飛なら以上のようにまだまだ大変だったでしょうし、勝敗の行方がどちらに転んでいたか分かりません。
うーん、それにしても矢内さんの調子がいまひとつこのシリーズでも出なかったのが気になりますね。
危ない橋を渡りながらも、果敢に指し回した甲斐さんの将棋は見事だったと思います。
これからの活躍にも期待が持てそうです。
女流棋界は若年の活躍も話題に上っていて、この先益々面白くなりそうですね。
先日(4/11)行われたマイナビ女子オープンの五番勝負第2局は110手で挑戦者甲斐智美女流二段が勝ち、早くも女王のタイトルに王手を掛けました。
戦型は後手甲斐女流二段のゴキゲン中飛車に、対して先手番の矢内理絵子女王の駒組みが印象的でした。
局面が進むにつれ、先手の矢内女王がと金を二枚作って後手玉に迫っていきましたが、終盤千日手模様のところから甲斐女流二段がそれを回避し、二枚角を上手く利用して最後は先手玉を押さえ込みました。
あとで棋譜コメントを読んでみますと、勝負の明暗を分けたポイントとして86手目△7七金の局面(下図)が示されていました。

上図は、2手前に甲斐女流二段が千日手打開となる△7五桂の指し手に矢内女王が▲同金と応じると、すぐさま後手が△7七金と迫った局面です。
ここで本譜は▲同金でしたが、次△6七と以下先手陣は崩され矢内女王は無念の投了となりました。
さて、△7七金を▲同玉と応じていたらどうなっていたでしょうか?
棋譜コメントから▲7七同玉に△6七と以下▲同金△7五角成▲6六金打△同馬▲同銀△6五歩▲同銀までは分かりますが、その次△5五金ではなくて△7五金とし、▲7六銀引に△6六歩(変化図)でやはり後手の方が良いように思います。

変化図から▲同金△同金▲同玉に△6五歩と叩かれて、上下からの挟撃態勢で先手は勝ち目がありません。
矢内女王に勝ち筋がなかったのかよく分かりませんが、終盤の攻防に矢内さんらしい手が出ないのがいまいち不調の証なのでしょうかね。
これで次戦に甲斐女流二段が勝ちますと女流最高位のタイトルを奪取することになり、女流棋界がすっかり様変わりしそうです。
どうなるでしょうか?
戦型は後手甲斐女流二段のゴキゲン中飛車に、対して先手番の矢内理絵子女王の駒組みが印象的でした。
局面が進むにつれ、先手の矢内女王がと金を二枚作って後手玉に迫っていきましたが、終盤千日手模様のところから甲斐女流二段がそれを回避し、二枚角を上手く利用して最後は先手玉を押さえ込みました。
あとで棋譜コメントを読んでみますと、勝負の明暗を分けたポイントとして86手目△7七金の局面(下図)が示されていました。

上図は、2手前に甲斐女流二段が千日手打開となる△7五桂の指し手に矢内女王が▲同金と応じると、すぐさま後手が△7七金と迫った局面です。
ここで本譜は▲同金でしたが、次△6七と以下先手陣は崩され矢内女王は無念の投了となりました。
さて、△7七金を▲同玉と応じていたらどうなっていたでしょうか?
棋譜コメントから▲7七同玉に△6七と以下▲同金△7五角成▲6六金打△同馬▲同銀△6五歩▲同銀までは分かりますが、その次△5五金ではなくて△7五金とし、▲7六銀引に△6六歩(変化図)でやはり後手の方が良いように思います。

変化図から▲同金△同金▲同玉に△6五歩と叩かれて、上下からの挟撃態勢で先手は勝ち目がありません。
矢内女王に勝ち筋がなかったのかよく分かりませんが、終盤の攻防に矢内さんらしい手が出ないのがいまいち不調の証なのでしょうかね。
これで次戦に甲斐女流二段が勝ちますと女流最高位のタイトルを奪取することになり、女流棋界がすっかり様変わりしそうです。
どうなるでしょうか?
第68期将棋名人戦がいよいよ始まりまして、昨日その第1局に決着がつきました。
先手となったのは挑戦者の三浦弘行八段。対して後手の羽生善治名人が三浦八段の手にどのように応じるのか注目していました。
戦型は横歩取り後手8五飛車戦法でした。
俄然注目の場面が現れたのが二日目の46手目、羽生名人が△7六歩と打った局面です。誰もが予想しなかったと思われる手で、三浦八段はここで大長考に。
「一体羽生名人は何を考えついたんだろう?」 私もビックリしました。
その後数手進んで意味は分かりましたが、果たして羽生名人の構想が旨くいくのか注目していました。
終盤に向けてやや先手の三浦八段の方が有利な展開なのでは、と思って見ておりましたが・・・。
形勢が動いたのは下図に示す82手目の局面です。

数手前に羽生名人が△4六桂打とし、▲同歩△同桂▲4七玉に△3八桂成となったのが上図で、このあと三浦八段は▲3四桂と詰めろを掛けましたが、△4九龍から先手玉が上部に追われ、結局掴まってしまいました。
上図で▲3四桂の詰めろに代えて、先に▲4二銀成(あるいは▲4二成香)と王手を掛けていたらどうだったでしょうか?
参考に手順を示しますと、▲4二銀成以下△同金▲同成香△同玉▲3四桂△3二玉▲4二金△2三玉▲2二桂成△同玉(変化図)となった局面は、まだ形勢的にどちらがいいのか分からない感じがします。

変化図から▲3二金打としても△1二玉と寄られ▲3八金と成桂を取るぐらいですが、次に△4九飛成があって先手玉が追い込まれそうです。
ということで、先手の三浦八段の方に勝ち筋があったのかどうかは私にははっきり分かりません。
三浦八段が有利と思われていた展開だっただけに、結果的には不思議な一番だったように感じました。
この対局に見られるように、読みを外しながら相手に決め手を与えずに指し回す羽生名人の底力を改めて感じた次第です。
先手となったのは挑戦者の三浦弘行八段。対して後手の羽生善治名人が三浦八段の手にどのように応じるのか注目していました。
戦型は横歩取り後手8五飛車戦法でした。
俄然注目の場面が現れたのが二日目の46手目、羽生名人が△7六歩と打った局面です。誰もが予想しなかったと思われる手で、三浦八段はここで大長考に。
「一体羽生名人は何を考えついたんだろう?」 私もビックリしました。
その後数手進んで意味は分かりましたが、果たして羽生名人の構想が旨くいくのか注目していました。
終盤に向けてやや先手の三浦八段の方が有利な展開なのでは、と思って見ておりましたが・・・。
形勢が動いたのは下図に示す82手目の局面です。

数手前に羽生名人が△4六桂打とし、▲同歩△同桂▲4七玉に△3八桂成となったのが上図で、このあと三浦八段は▲3四桂と詰めろを掛けましたが、△4九龍から先手玉が上部に追われ、結局掴まってしまいました。
上図で▲3四桂の詰めろに代えて、先に▲4二銀成(あるいは▲4二成香)と王手を掛けていたらどうだったでしょうか?
参考に手順を示しますと、▲4二銀成以下△同金▲同成香△同玉▲3四桂△3二玉▲4二金△2三玉▲2二桂成△同玉(変化図)となった局面は、まだ形勢的にどちらがいいのか分からない感じがします。

変化図から▲3二金打としても△1二玉と寄られ▲3八金と成桂を取るぐらいですが、次に△4九飛成があって先手玉が追い込まれそうです。
ということで、先手の三浦八段の方に勝ち筋があったのかどうかは私にははっきり分かりません。
三浦八段が有利と思われていた展開だっただけに、結果的には不思議な一番だったように感じました。
この対局に見られるように、読みを外しながら相手に決め手を与えずに指し回す羽生名人の底力を改めて感じた次第です。
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